http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=76885
「小さく生んで大きく育てる」のことわざが当てはまるのは今や、低体重児のリスクが指摘される出産ではなく、政治手法なのかもしれない
▼国民の反対に遭う法案や閣議決定などはハードルを低くした内容で通し、慣れたころに大きくしていく。日ごろ政治に疎いといわれる若者たちが、閣議決定した集団的自衛権行使容認から、そのにおいを敏感にかぎ取っている
▼決定と自衛官募集の解禁が重なった7月初旬に案内の封書を受け取った高校3年生は「赤紙がきた」などと恐れ、戸惑いを続々とネット上に寄せた。県内の学校でも「自分たちが戦争に行くことになるのか」と危機感を募らせる生徒の声を聞くという
▼県内の二十歳代の男性は、閣議決定による解釈変更の動きが出た3月、自衛隊を辞めた。「自衛官は人を殺すことを想定していなかったから仕事としてやれた。今後は戦争で命を落とすかもしれない」との言葉は実感を伴い、重い
▼小学生のころから生活は困窮し、18歳で衣食住が足りると入隊して給料は家族へ送った。本紙のインタビューに応じた勇気と誠実さが、戦場に行く人を透明にした議論から、将来あるお隣の若者の生身にかかわる現実の問題なのだと覚醒させた
▼若者が恐れおののく未来にしてはならない。戦後の恩恵を受けた世代は成すべきことがある。(与那嶺一枝)