不平等の是正、公平な社会に向け、ただちに実効性のある改善策を政府に迫る数字だ。
「子どもの貧困率」が2012年時点で16・3%と過去最悪となったことが厚生労働省の国民生活基礎調査で分かった。平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合だ。09年の前回調査から0・6ポイント悪化した。
特に母子世帯など大人が1人しかいない世帯の人の貧困率は54・6%に跳ね上がり、経済的困窮が深刻だ。前回より約11万も増えた母子家庭世帯の母親は子どもを抱えながらの就労が難しく、4割以上が非正規労働者だ。厚生労働省によると、母子家庭の平均年収は291万円で、子どものいる家庭平均より約370万円低い。
給食費が払えず、学用品さえ満足に買い与えられない家庭も少なくない。生活苦のため進学をあきらめ、安定収入を得られる職にも就けない。その結果、大人になっても貧困にあえぎ、同じ状況がその子にも及ぶ。こうした「貧困の連鎖」をどう断つかが、政府に問われている。
今年1月に施行された「子どもの貧困対策推進法」は、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのない社会の実現を目指す。その基本方針となる政府の大綱が今月中に閣議決定される。今後、各都道府県が計画を作る際の指針にもなるものだ。
大綱案によると、重点政策の柱は、教育、生活、保護者の就労、経済支援の4分野。教育では、進学希望者のために給付型奨学金の創設や、学校を拠点にした学習・生活支援、段階的な幼児教育の無償化などを盛り込んだ。
だが貧困率引き下げの数値目標や施策の実現時期などに触れず、財源の裏付けも示していない。これではどこまで本気かが疑われよう。メニューを並べただけに終わらず、施策の実施状況や効果を検証するためにも、大綱には目標値を明示すべきだ。
内閣府の有識者検討会が求めていた、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当や遺族年金を20歳まで拡充する施策は盛り込まれない見通しだ。扶養手当の拡充だけで年約420億円が必要になるというが、貧困の連鎖を切るには大胆な予算配分も必要だろう。
貧困は社会の在り方への警鐘である。子どもの可能性を押しつぶす社会に、未来があろうはずがない。格差社会の現実を直視し、是正していく強い実行力を政府に求めたい。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/
[京都新聞 2014年07月22日掲載]